来週の引越し荷物をまとめていると、父が出版した本が出てきた。
父にとって最後となった会社で毎月発行していた原稿をまとめたものだ。
この本が出版されたころは、まだ子育てしていた主婦のわたしには
読んでも内容をちゃんと理解することができなかったのだが
父がいた会社の中で働くようになって
今の自分が置かれている立場と照らし合わせてみると、よく理解できる。
「人は仕事を通じて成長しそれにつれて企業も成長し優良企業に育っていく」
これが、父が追い求めた夢であり、信念であった。
気づいたことはすぐメモをし、やらなくてはならないことを明確にしておく。
それらに優先順位をつけ整理し、具体的なスケジュールを立てる。
これはきわめて常識的な行動であり、平凡な活動である。
しかしこの平凡なことが実は簡単にできない難しいことだったりする。
世の中にはものごとを要領よく処理する妙薬はない。
平凡な当たり前のことをやりぬくしかない。
「平凡なことを非凡にやりぬけ」というのが、父の座右の銘なのだ。
子供の頃は父の仕事がどんなものかわからなかったし
自動車会社の部長から、台湾へ技術顧問団団長として出向し
その後は販売会社の社長、地元に戻って子会社の専務、
最後の会社になった孫会社の社長となったのも、父の運の強さだと思っていたが
やるべきことをやった者だけが獲得できる勲章なのだと、今は思う。
職種こそ違え、この信念はどんな仕事にも共通のものではないか。
そんなことを考えながら、そっと荷物に父の本を入れた。