メニュー担当の栄養士3人が年始の挨拶に来た。
昨年末から加わった新人にとってI部長は「心を開いてくれない」存在なのだという。
たしかにI部長は愛想がいいほうではなく、初対面の人にはとっつきにくい。
好き嫌いがはっきりしているらしく、第一印象で勝手に「苦手な人」という判断をしてしまうようだ。
ところがそんな無愛想な部長が、わたしと話しているときには
冗談を言ったり、笑って普通に会話しているので、傍で見ている人たちは不思議に思うらしい。
そういえば以前先輩栄養士からも同じように言われたことがあった。
ただ単純にわたしが物怖じしないだけなのか?
それとも、よほどI部長を扱うコツをわかっているのか?
ひょっとしたら部長はわたしを「人」としてではなく
「珍獣やペット」としてみているからなのか?
などと、N部長はわたしのI部長への接し方に感心しているそうだ。
・・・「珍獣やペット」って、なんだよ(苦笑)
わたしも初対面なのにずかずか心に入り込んでくる無神経さは苦手だし
馴れ馴れしい人もできればご勘弁願いたい。
「とっつきにくい」「第一印象が恐い人」と思われている共通点があるし
I部長とわたしは性格や考え方が似ているのかもしれない。
わたしが新卒で入社したときに、I部長は本社にいた栄養士だった。
たぶん付き合いが長い分、気を許しているだけなのだと思うのだけど
実は「コツ」がないわけでもない。
それは部長に対してだけでなく、誰に対してでもそうなのだが
「面倒なことになりそうだったら、逆らわない」
これに尽きる。
わたしはもともと一言多くて、何度も嫌な思いをしたり損をしてきた。
核心を突く一言で相手をやりこめることが得意だったが
大人になるにつれてその言葉を飲み込み脳内で相手を抹殺することにした。
文句を言いながらでも結局は仕事をしなくてはならないのであれば
黙ってやるほうが美徳なのではないかと考えるようになった。
昔に比べたら吼えないし噛み付かなくなったけれど
それは面倒なことにかかわるのがわずらわしいだけで
無意識に危険回避する動物的勘が働くようになったのかもしれない。
眠れる獅子のまま、放っておいてほしいものだ。