育てる

衛生教育後、比較的最近入社した調理師さんが声をかけてきた。

「今日はもうお帰りですか?」

「いや、まだ浜松に戻るんですよ」

わたしが隔週で単身赴任をしていることを知ると

「女性で単身赴任なんて、かっこいいですね!僕は今まで何人も栄養士を見てきているけれど、

あなたのようなちゃんとした栄養士がいることを初めて知りました」

と、こちらが恥ずかしくなるような褒められ方をされた。

いや、衛生教育なんて、何回かやれば誰でも話せることだと思うけど。

今まで彼がいた会社はどこでも、若い栄養士は知識も技術も未熟で、人前で堂々と話ができる人はおらず

「専門学校を出た調理師になぜ大卒の栄養士がばかにされるのだろうか?

最高学歴を持っていながら使えない栄養士が多すぎる」ということらしい。

確かにわたしも彼が言うとおりだと思う。

調理ができない、包丁が使えない、献立が立てられない・・・という栄養士は実際何人もいた。

わざと答えられないような質問をしてきたり

献立を自分の作りたいように勝手に変更したり

あからさまに栄養士をばかにしているような調理師も何人もいた。

新卒の栄養士でパーフェクトにこなせる人など、ほとんどいないだろう。

調理師とパート、パート同士の間に入って潤滑剤のような働きをしなくてはならない場面では

知識や技術だけではうまく立ち回れないことも多い。

誰もがなにかしらの洗礼を受け、その環境の中で生き残れない人は辞めていく。

そんな光景をなんど見ただろうか。

そもそも、産業給食は就職人気が低い。

なぜなら栄養士は「栄養の指導に従事する者」という意識から

病院、学校、福祉施設、行政などの花形栄養士に憧れるからだ。

日本栄養士会に記述されている順番も産業給食は下のほうにあることから、その位置づけはあきらかだ。

同じ有国家資格者でありながら医師や看護士などと比較しても

その社会的地位や職場内の権限は低く、労働条件や賃金の面でも恵まれているとはいえない。

そのうえアウトソーシングが進むなか、栄養士の入れ替わりは激しく

この現状を打破するには栄養士全体の底上げをしていかなくてはならないと思う。

あらためて現場の声を聞き

これからは「育てる」という仕事をしたいと、ますます強く感じた。

2007年5月25日