湊かなえさんの作品を初めて読みました。
読んだ後に嫌な気分になるミステリーというジャンルのブームを起こした人と認識しているので
ドラマ化、映画化した作品についても見たことがなかったのですが
この「絶唱」には中高時代の同級生が「尚美」という名前で出てくるというので、購入しました。
(6月20日ブログ参照)
「楽園」「約束」「太陽」「絶唱」という4つの短編集でしたが
登場人物と阪神大震災とトンガとを結びつけるキーパーソンが彼女でした。
わたしは高校卒業後の彼女のことを人づてに聞くだけで、トンガでの生活はほとんど知りませんでした。
「尚美」が出てくるたびに、彼女はこんなふうにトンガになじんでいたのだろうか?と懐かしく
ご主人のボランティアのエピソードも盛り込まれていて
湊さんはこんな話まで書いてくれたのかとうれしくなりました。
ーあの日、さよならさえ、言えなかったー
末期がんであることがわかって、一時帰国し身辺整理をし静岡からトンガに帰国する日、
何人かの同級生が新幹線でいっしょに空港まで送って行った時も
もう二度と彼女に会えないとわかっているのに、わたしは仕事で参加することができませんでした。
平日ではあったけれど、仕事は休もうと思えば休めたはずです。
わたしは彼女にかける言葉が見つからなくて、たぶん無意識に逃げたのだと思います。
湊さんの言葉を借りるのであれば、やっぱりわたしは+1でしかなかったことを痛感します。
いつか彼女に会えたときに、そんなことと豪快に笑い飛ばしてくれるのでしょうけれど。